一斗缶観測日記

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YOASOBIの「夜に駆ける」の歌詞について(後半)

記事が長くなりそうだったら分割するのが良いって自分の中の怠惰担当が叫んでいたので分割しました。

 

 前半:元になったweb小説の感想
 後半:歌詞についての考察 ←この記事

 

頭からっぽで曲を流し聞きしてた時は、「何かを見つめる君」「(僕以外の誰かに)見惚れているかのような」などの歌詞から彼女が別の誰かに惚れて別れることになる歌詞かと思っていました。

 

付き合っている君が別の誰かを好きになってしまい、必死に別れないようにするけれどうまくいかず、彼女をつなぎとめることに疲れてしまいとうとう別れを告げる……みたいな。


「僕らはきっと 分かり合えるさ 信じてるよ」とか希望的観測過ぎるだろとか悲しくなってました。

 

実際は前半で話したように、小説がモチーフとなった切ない物語でした。
歌詞を引用しつつ、それぞれの歌詞が何を意味しているのか解説(考察?)していきます。

 

・・・

 

>沈むように 溶けてゆくように
>二人だけの空が広がる夜に

 →物語のオチ。二人で屋上のフェンスの向こう側に落ちていくイメージ。

 

>「さよなら」だけだった
>その一言で全てが分かった

 →死にたがりの君が自殺を試みるたびに僕に連絡をしていた描写。連絡を受けた僕はまた彼女が自殺をしようとしていると理解し、止めるために動き出す。

 

 >日が沈み出した空と君の姿
>フェンス越しに重なっていた

  →夕暮れ時の屋上で彼女を見つける。フェンスの向こう側にいて飛び降りようとしている君の姿。

 

>初めて会った日から
>僕の心の全てを奪った
>どこか儚い空気を纏う君は
>寂しい目をしてたんだ

 →僕と君との出会いも、飛び降り自殺しようとしていた君を止めたのがきっかけだった。今にも消えてしまいそうな寂しげな雰囲気の彼女に、僕は一目ぼれをした。

 

>いつだってチックタックと鳴る世界で何度だってさ
>触れる心無い言葉うるさい声に涙が零れそうでも
>ありきたりな喜びきっと二人なら見つけられる

 →時間が流れていく。心無い言葉が飛び交う騒がしい世界で傷つき、辛い思いをしていても、二人で一緒にいればきっと幸せを見つけられる(だから一緒に生きよう)と僕は無理して前向きな言葉をかける。

 

>騒がしい日々に 笑えない君に
>思い付く限り眩しい明日を
>明けない夜に落ちてゆく前に
>僕の手を掴んでほら

 →虚ろな目をしていて笑顔をなくした君。そのまま夜に落ちる(死んでしまう)前に、僕の手を掴んで一緒に生きよう。

 

>忘れてしまいたくて 閉じ込めた日々も
>抱きしめた温もりで溶かすから
>怖くないよいつか日が昇るまで 二人でいよう

 →今生きている現実は辛くて苦しくて、忘れてしまいたいほどだけど、二人なら怖くないよと励ます。今は希望の持てない夜のような現実でも、いつか希望のもてる朝がやってくる。それまで二人で一緒にいよう。

 

>君にしか見えない
>何かを見つめる君が嫌いだ
>見惚れているかのような 恋するような
>そんな顔が嫌いだ

 →死に憧れる人間だけが見えるという死神。君が(僕には見えない)死神に見惚れるたびに、僕は嫉妬してしまう。

 

>信じていたいけど信じれないこと
>そんなのどうしたってきっと
>これからだっていくつもあって
>そのたんび怒って泣いていくの

 →現実では誰かをだます言葉も傷つける言葉もたくさん飛び交っていて、これからも変わらない。そのたび怒ったり、泣いたりするのだろう。

 

>それでもきっといつかはきっと僕らはきっと
>分かり合えるさ 信じてるよ

 →死にたがる君と、一緒に生きていきたいという僕の考えは違うけれど、きっといつか分かり合えると信じている。

 

>もう嫌だって疲れたんだって
>がむしゃらに差し伸べた僕の手を振り払う君
>もう嫌だって疲れたよなんて
>本当は僕も言いたいんだ

 →生きようと励ます僕の手を君が振り払う。もう嫌だ、疲れたって君は言うけれど、本当は僕だってそう言いたいんだ。

 

>ほらまたチックタックと鳴る世界で何度だってさ
>君の為に用意した言葉どれも届かない

 →時は流れていく。どれほど励ましの言葉をかけても、元気づけても、君に僕の気持ちは届かない。

 

>「終わりにしたい」だなんてさ
>釣られて言葉にした時 君は初めて笑った

 →君の言葉につられるように、僕は「終わりにしたい」と本音をこぼしてしまった。すると、これまでいくら言葉をかけても笑わなかった彼女が、初めて笑った。

 

>騒がしい日々に笑えなくなっていた
>僕の目に映る君は綺麗だ
>明けない夜に溢れた涙も
>君の笑顔に溶けていく

 →目まぐるしい日々に疲れ果てて、死にたがっていたのは僕だった。救いのない世界でこぼした涙も、君の笑顔でかき消えていく。

 

>変わらない日々に泣いていた僕を
>君は優しく終わりへと誘う
>沈むように 溶けてゆくように
>染み付いた霧が晴れる

 →この世界に絶望していた僕を君は死へと誘ってくれる。霧がかかったようにあいまいだった死にたいという気持ちが、次第にはっきりとしていく。

 

>忘れてしまいたくて 閉じ込めた日々に
>差し伸べてくれた君の手を取る
>涼しい風が空を泳ぐように今吹き抜けていく
>繋いだ手を離さないでよ
>二人今夜に駆け出していく

 →忘れてしまいたいほど辛い現実の中で苦しむ僕に、君は手を差し伸べてくれた。その手を取って夜の闇へと身を投げる。

 

 

改めて歌詞を見てみると言葉の選び方にセンスがあって感心します。元の小説の良さを生かしつつ、情景をイメージする言葉をうまく散りばめている。

ぜひ曲と小説の両方を堪能することをおすすめします。