一斗缶観測日記

PCやソフトの設定、Tipsなどを時折投稿します

YOASOBIの「夜に駆ける」の歌詞について(前半)

YOASOBIの「夜に駆ける」という曲の歌詞が気になったので調べてみました。


最初は彼女に振られる男の失恋ソングかと思っていましたが、少し調べたら全くの見当違いで、小説をモチーフにした歌詞でした。


小説は死に憧れる彼女と、彼女を救おうとする僕、そして『死神』の物語です。

最初は元ネタだったので読んでみただけでしたが、面白くてつい何度も読み返してしまいました。

 

これはぜひ整理しておかないといけないと思い、記事にまとめます。

 

なんか色々書いていたら長くなったので、

 前半:元になったweb小説の感想 ←この記事
 後半:歌詞についての考察

でまとめます。

 

あらためて説明すると、「夜に駆ける」はタナトスの誘惑(作者:星野舞夜)というweb小説をモチーフにした歌です。

以下、web小説の簡単なあらすじ


----------------------------------
付き合っている彼女は自殺をしようとするたびに僕へ連絡する。
僕はそのたびに彼女の自殺を止めて励ますが、どんな言葉も彼女には届かない。

死に憧れる人には「死神」見えるという。それはその人にとっての魅力的な姿をしているそうだ。

彼女は僕には見えない死神に恋焦がれている。

僕は次第に彼女を止めることにも疲れていき、もう終わりにしたいと本音をこぼす。

その時彼女は初めて微笑みを浮かべ、僕も自分の本当の気持ちに気づく……。
----------------------------------

 

短編ながらさりげなく伏線が回収されているし、夜を連想させるどこか儚い雰囲気と、気持ちがすれ違ってしまう僕と彼女の思いがうまく描かれていてとても印象的でした。

暗い話ではありますが、不思議と読み返してしまう作品です。

 

うまいと思った部分を引用しながら簡単に感想をまとめます。

 

ブラック会社に勤めながら独りきりで寂しく暮らしていた僕にとって、彼女はまるで天から舞い降りた天使のようだった。

序盤の一文が非常にうまい。僕自身が辛い境遇で生きていたこと、君が僕にとって魅力的に感じる姿をしていることが描写されています。

 

中盤から「死神」について説明があります。死神は死に惹かれる人間だけが見ることのできる存在で、

それを見る者にとって1番魅力的に感じる姿をしているらしい。

とあり、ここで君=死神であること示唆されます。

 

こんなにも僕は君のことを愛しているのに、君は僕だけを見てはくれないのだろう。

1回目に読んだ時は僕がかわいそうだと思いましたが、読み返してみると、これってお互い様でもあるかもしれません。

死神=君と考えると、僕は生にばかり目を向けているので、君から目を背けているともいえるのではないでしょうか。

 

君が自殺を図ろうとする度に僕のことを呼んだのは、僕に助けてもらいたかったからじゃない。
君は、僕を連れて行きたかったんだ。

僕が自分の気持ちに嘘をついて、君をこの世界に引き留めていたことに気づきました。
本当は誰よりも僕が死にたがっていたのだと気づき、君が「僕にとっての死神」であることを自覚します。

 

そして、

この世界が僕らにもたらす焦燥から逃れるように
夜空に向かって駆け出した。

二人は夜(死)に向かうことを決意して物語はきれいに終わります。

 

君が本当に存在していたのか、それとも僕だけに見える幻覚なのか、あえて想像の余地を残しているところが素敵ですね。 

死神はタナトス(死に対する欲動)に支配される人間だけに見えるとありますが、第三者から見たわけではありません。

二人の妄想である可能性もありますし、僕一人の妄想である可能性もあります。

 

どちらとも言い切れないところに余韻を感じます。

 

夜に駆けるの歌詞考察の方は次の記事に回します。